枝、葉、ガクは黒の輪郭線を使って描いています。枝には紫、
葉には青と緑と黄色、ガクには黄緑の上絵の具で彩られてい
ます。桜の花と蕊(しべ)は赤の輪郭線で描かれ、赤の上絵の
具で彩り、白の桜花は塗り残します。濁手の乳白色のような白
の余白が赤や緑や青や黄緑といった色をより引き立たせます。
独特の白色が作品全体を優しく包み込むような暖かを漂わせ
ます。
幹、蔓(つる)、葉、藤の一部は黒の輪郭線彩られています。
幹に紫、蔓には黄緑、葉には青、緑黄緑、そして一部の藤には
黄色の上絵の具で彩られています。大きく描かれております。
繊細な絵付けもさることながら、濁手による白が柔らかく全体を
まとめています。
14代柿右衛門は暇を見ては野山の植物のスケッチに余念がない。それらをもとに作品の題材として取り上げた植物を、日
本画の修練で体得した生き生きとした線描、太い細いのある肥痩線、均一な太さの鉄線、これらのさまざまな線描を自在に操って植物文様を描く。これらの植物文様が、美しい白磁の上に余白を活かしながら、黒の輪郭線や赤の輪郭線で描かれ、さらに赤の上絵の具のほかに、群青と呼称する青、緑、萌黄と呼称される黄緑、黍と呼称される黄、そして紫といった透明感のある上絵の具で彩られている。また「余白を描け」と祖父の代からよく言われていたという。魅力ある乳白色の白磁を活かすため、文様は余白と強調する必要がある。「白い地肌を多く残すために、ポイントに何か強い物がいる。その時に余計に何かを描けば完全に失敗する。省く事がいかに難しいか、勇気のいることです。」と柿右衛門が語る。
平成10年 | 4月 | 外務大臣表彰(永年にわたる国際文化交流の功績による) |
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平成11年 | 4月 | 九州産業大学大学院芸術研究科専任教授就任(平成22年6月より名誉教授) |
11月 | 文化大臣表彰(濁手の伝統的技法伝承に努め、地域文化発展、向上に貢献する) | |
平成12年 | 5月 | 有田陶芸協会会長に就任(平成20年6月より名誉会長) |
平成13年 | 3月 | 佐賀県立有田窯業大学 校長に就任 |
7月 | 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定 | |
11月 | 佐賀新聞文化賞受賞 | |
平成17年 | 11月 | 旭日中綬章受章 |
平成18年 | 1月 | 有田町名誉町民の称号を受ける |
平成18年 | 6月 | 日本工芸会副理事長に就任(平成22年5月迄) |
平成21年 | 11月 | 西日本文化賞受賞 |
平成21年 | 6月 | 第56回日本伝統工芸展審査委員に就任 |
14代酒井田柿右衛門は平成13年7月12日、重要無形文化財「色絵磁器」の保持者として人間国宝に認定されました。昭和9年8月26日、佐賀県西松浦郡有田町南川原に13代目酒井田柿右衛門の長男として誕生しました。酒井田家は日本で初めて色絵磁器を完成させたといわれる有田の名窯です。幼少時代より14代目としての期待を一身に背負い、自身が14代目になるという自覚をおぼろげに持ちながら、デッサン技術などを磨きながら、学生時代を過ごしました。その後、祖父12代目酒井田柿右衛門、父13代目酒井田柿右衛門に師事しました。とくに祖父には可愛がられ、絵の具の調合法の指導も受けていました。そして昭和41年の西部工芸展で陶芸作家としてデビューを飾り、昭和46年7月3日、父13代目酒井田柿右衛門が死去。同年10月25日に14代目酒井田柿右衛門を襲名しました。